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モナコGPはJ・バトンが今季5勝目を挙げました

モナコGPの取材、CSフジ721の現地中継解説を終えて、日本に戻ってきました。
今回は第5戦スペインGP〜第6戦モナコGPと続く、今季初のヨーロッパ2戦の取材旅で、3週間ぶりの日本です。伝統のモナコGPをTV観戦された方も多いと思いますので、早速、レースレポートをお送りしましょう。

モナコGPには「二つのレース」があります。その両方に今年、J・バトン(ブラウンGP)は初めて勝ちました。土曜日の予選“タイムレース”で逆転PP(ポールポジション)、日曜日の決勝“260km/100分レース”で独走ウイン、10年のキャリアを持つ彼が二日間、二つのレースをパーフェクトに闘い抜いた週末でした。

もともと彼は、モナコが苦手ではないのですが、ドライビング・スタイルに合わない部分があって、ここではチームメイトに先行されるケースが多かった。今年は木曜日のフリー走行でいきなりガードレールをヒット、僕はこれが吉と出るか凶と出るか、非常に気になりました。フリー走行1のトップはチームメイトのR・バリチェロ、バトンは8位タイムがやっとで、今年最悪の滑り出しでした。

「バトンはスタイルを変えてきたな」——。
金曜日の休日後、フリー走行3をコースサイドで取材しながら、僕は“別人バトン”に気がつきました。この日の彼は、烈しくブレーキをロックさせ、リアタイヤのスライドを誘発させながらブラウン・メルセデスを振り回し、一段階、いや二段階くらいアグレッシブの度合いを上げてきたのです。高速コーナーでは美しいラインを描き、低速カーブでは縁石に乗り上げずに綺麗に回るバトンが、荒っぽく、男の中の男といった感じで“乱暴”な走りをし始めたのです。

言葉を誤解されると困るのですが、がモナコは“暴走気味”に攻めないとタイムは削れません。昔、A・セナが真剣にそう言ったのを、僕はいまでもはっきり記憶しています。予選Q1:1分15秒210(2位)、Q2:1分15秒016(8位)、Q3:1分14秒902(1位)。よく見て欲しい。彼のタイムはどんどん削られ、Q2最速のK・ライコネン(フェラーリ)を逆転し、PPを手中にしたのです。1000分の25秒差で負けたライコネンは悔しさを隠すために、いつもの無表情を装っていましたが、この晩、パドックから帰るときはファンを無視してスクーターでぶっ飛ばして消えて行きました。白バイ先導などを断って・・・。

日曜日の決勝78周、260kmショートレースは予選と真逆で“暴走”は禁物。アグレッシブではいけない。コーシャス(慎重)でなければならない。これもモナコ5連覇王のセナが残した記憶に残る一言です。果たしてバトンは、土曜日のスタイルを変えて日曜日にアジャストできるのか、僕はその一点に集中しながらTV画面と、プールサイドの走りを放送席から見つめました。

決勝レースに要した時間、1時間40分44秒282を皆さんはとても長く感じたことでしょう。
しかし、バトンはこの約100分間をひたすらひとつのプレー、作業をやり通したのです。
以前僕は、一度オンボードカメラ目線でスタートからゴールまで、セナの78周VTRを家のソファに座ったまま“バーチャル体感”しようと試みたことがあります。5周もすると視線が外れ、そこで“クラッシュ”。気合を入れて再スタート、今度は中盤でトイレに行きたくなって耐えられずに“オトイレ・ピットイン”。そこで考え、少しVTRをスロー再生にし、セナほど速くなくてもいいから“完走狙い”に気持ちを切り替えてみました。が、ペースを落とすと落とした分だけリズムがおかしくなってしまい、集中心が保てなくなってしまいました。

僕が何を言いたいかお分かりでしょう。人間が、スポーツに限らずパーフェクトに約100分間の連続作業を持続するのは<神業>に近い。しかし、それをただ眺めているだけの人々には、その<神業>も退屈なものに見えてしまうということ。

モナコの勝利で、今季通算6戦5勝としたバトン。しかも、バーレーンからスペイン、モナコと続く3戦を同一エンジンのまま3連勝。これは、近代F1では驚くべき記録と言わざるを得ない。パワード・バイ・メルセデスのモナコ神話、98年からの12年間で通算7勝と、またその記録を伸ばしたのです。

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