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2010年05月 アーカイブ

2010年05月25日

地中海2連戦はレッドブルが大噴火!

5月のヨーロッパラウンド「地中海2連戦」は、とうとうレッドブル火山が大噴火。チャンピオンシップ争いにも大きな“地殻変動”が起きようとしている。
スペインGP&モナコGPを連勝したM・ウェバー、ドライバーズポイントでは大量50点を稼ぎ出し、チームメートのS・ベッテルの78点に並んだが、1勝多い彼が初めて首位に立った。オーストラリア人ドライバーがポイントリーダーになったのは、80年代初期のA・ジョーンズ以来のことで30年ぶり。コンストラクターズポイントでもレッドブルがフェラーリ、マクラーレンを一気にオーバーテイクして3位から1位へ、こちらも05年のチーム結成以来初めてトップに立った。

メーカー系名門両チームを伝統の舞台で倒したインディペンデントチームの活躍は、サッカーW杯南ア大会を前にしたヨーロッパでもビッグニュースになっていた。モナコ帰りの夜、2週間ぶりに和食を楽しもうとパリのなじみの寿司屋さんに直行してみると、ここでもご主人が「昨日テレビで見ましたよ。レッドブルってすごく速いんですね!」と興奮気味。レース内容をいろいろと質問され、あれこれ答えているうちに、店内はいつの間にか“ディナー・トークショー”に。おかげで枝豆、酢の物、カリフォルニア裏巻きなどお店からのサービスで、満腹になるほど日本食を堪能することができた。これもレッドブルの優勝が大きく報じられたおかげ(?)。

レッドブルについては、第5戦スペインGPからウェバーとベッテルの二人のドライバーの間に違いが見え始めていることに僕は気づいた。それはフリー走行でのプログラミングの部分で、もともと目指す方向の異なる二人のセッティングが、より顕著になってきたことだ。てきぱきと素早くセットアップを決めていくウェバーは、初日からスムーズにロングラン・チェックに進み、レース想定でBSの2種類のタイヤを比較しながらまとめ上げ、二日目には総仕上げの“予選シミュレーション”を実行する。
一方のベッテルは、セットアップがなかなか自分のストライクゾーンに決まらず、時間がかかってロングランに進めない。気にしているのはブレーキング・フィールのようなのだが、開幕序盤に天才的ドライビングを見せてきたベッテルがマシン挙動に悩み、あれこれセッティングをいじっている姿がいかにももどかし気に見えた。

予選で極限のスピードを追求するとなると、マシンに自信を持てる者と、そうでないもの者の差は、“PP(ポールポジション)バトル”になってはっきりと表れる。この2連戦で連続PPを決めたウェバーに対して、2位-3位に終わったベッテル。結局、予選の一発タイムアタックで勝ったウェバーが、決勝でもスタートを決め、安定したレースペースを見せながら2連勝をものにした。まさに盤石なウェバーのウイニングパターンと言っていい。

モナコGPの後、チームはベッテルが開幕から使用してきたマシンRB6#03号車をトルコGPからチェンジすることを決めた。ウェバーは初戦で#02号車を使い、第2戦から#04号車に切り替え、そこからずっと予選最前列を続けている。マシンに大きな個体差があるとは思えないが、彼がこのシャシーになってから速さを引き出しているのは誰もが認めるところ。だから現状としてセットアップに悩むベッテルに、ここで別のシャシーを与えるのは“治療法”としては納得がいく。新車に切り替わったベッテルが、果たしてイスタンブールで蘇るか。中盤戦の大きな見どころ、キーポイントになるだろう。

さて、いろいろトピックスがあったモナコGPで論議を呼んだのがM・シューマッハの「ペナルティー問題」だ。レース終盤、低速の最終コーナーのラスカスでロータスのJ・トゥルーリとヒスパニアのK・チャンドックがクラッシュ。残り3周というところで、なんと4度目のセーフティカー(SC)出動(新記録)となり、そのままファイナルラップに突入。最終コーナーを前にセーフティカーが戻り、残された数百メートルでのレースとなったが、ここでシューマッハがフェラーリのF・.アロンソをかわし6番手に。しかし、この行為がレース審査委員会に違反と判断され、20秒加算ペナルティーを受けたのだ。
 
このオーバーテイクについて、メルセデスは事故処理が済みSC退去後には“競技状態に戻る”と解釈、ドライバーには「オーバーテイクできる」と指示を出していた。一方のフェラーリやマクラーレンは、最終ラップなのでSCゴール“非競技状態のまま”と解釈、ドライバーには「オーバーテイクするな」という指示を出していた。まったく真逆の指示がチームから出ていたわけである。だから、シューマッハはチームの指示に従い、ラスカス立ち上がりで加速アップ、インサイドラインを突進してアロンソの前に出た。一方のアロンソは、前を行くマクラーレンのL・ハミルトンを抜かないようゆっくり立ち上がり、追い越し禁止という“チーム指示”を守ったのである。

シューマッハの行為に対し、審査委員会が後に決勝タイムに20秒加算のペナルティーを課し、12位ダウンと判定された。メルセデス側は直後には「抗議」を申し立てていたが結局、上告措置は諦めた。ルール解釈上デリケートな部分があるこのSCがらみの“競技再開方法”に関して、FIAは6月23日にもっとはっきりさせることを発表した。個人的には以前のようにSC退去後、競技再開はスタートラインから、とするのが誰にとっても明確で判りやすいと思う。

この問題ですっかり忘れられているが、モナコGPではR・バリチェロの「ステアリング放り投げ事件」もある。レース中にクラッシュしたバリチェロは、マシンを脱出する際、ステアリングをコース上に放り投げ、それを後続のマシンが踏んでしまう事態を発生させた。これはレースの中でも、ドライバーがやってはいけない最も危険な行為だ。それについてバリチェロは「マシンから火が出て自分も危険だったから」と自己弁護している。そんな大ベテランの弁明を聞くと、言葉もない。ステアリングを外し急いでコクピットを出たら、それをはめ戻すのがルールであることを、彼ほどのベテランが知らないはずがないし、百歩譲って危険が迫っていたからとしても、何もコースに放り投げず、持ったままコース脇に避難すればいいことだ(VTRを見ると彼は全力疾走で駆け出してはいない)。後続のHRTのマシンに被害が出たが、もし上位集団が来ていてあれを踏み、弾き飛ばし、大事故にでもなっていたら……。このシーンを見て、僕と同様に昨年のハンガリーGPで起きた不運な“事件”を思い出した人もきっと多かったのではないだろう。
彼のとった行為がペナルティーに値するかどうかを云々するつもりはない。ただモータースポーツに携わる人間として、最低限の「スポーツのモラル」を守って欲しかった。それがベテランドライバーとして、彼のとるべき行為だと思う。

≪以下、パート2に続く≫
 
 

2010年05月28日

地中海2連戦を制したルノー・エンジンの強さとは!?

第5戦スペインGPの行われたバルセロナから、第6戦の地モナコまでは約670km、地中海沿いの高速道路をレンタカーのプジョー206+(ディーゼル)で移動。この2連戦、開催地はすぐ隣国でも日程は5月9日(日)にスペインGPの決勝、そして13(木)にはもうモナコGPのフリー走行開始と “中三日”の慌ただしさだ。僕はバルセロナを11日(火)に発ち、約7時間かけてモナコに入った。途中はフェラーリ・チームの“最終便トランスポーター”も一緒だったが、地中海沿いの高速道路からは海岸線が見えないのが残念だった。

マシンパーツが間に合わないとか、モーターホームがまだ組み立て中だとか、水曜日のモナコGPのパドックはてんてこ舞いの大騒ぎ、足の踏み場もない工事現場のようだ。それを横目にハーバーに立派なビル(?)を建て、チームオフィスとVIPエリアを完備させていたのがレッドブル・チーム。2階にはプールやバーもあって、このチームのホスピタリティーはNO.1。この点でもフェラーリやマクラーレン、メルセデスを抜き、名実ともにトップチームに踊り出た印象だ。わずか結成5年目のプライベートチームに、“タイトルスポンサー”がつく噂も出ている。それほど、いちドリンクメーカーの存在感は、F1界において急速に巨大化している。

モナコGPではルノー・エンジンが予選も決勝も1-2-3制覇、レッドブル・ルノー勢とルノーのR・クビサが圧倒した。過去には97年にウイリアムズ・ルノーとベネトン・ルノーの2チームがイギリスGPで1-2-3、ルクセンブルグGPで1-2-3-4を決めたことがあるが、その当時の活躍を思い出させるようなレースだった。

最近のモナコGPではメルセデス・エンジンが3連勝中で、この10年で6勝という強さで来ていた(フェラーリは01年以後未勝利でここでは弱い)。エンジン開発凍結ルールになってからメルセデス・エンジンが最強といわれているが、ルノー・エンジンを搭載したレッドブルが、今年はここまで6戦連続PP、決勝も6戦3勝という強さで、メルセデスの連勝をモナコでも止めた。この強さはまさに注目に値する。

2400ccV8エンジンのピークパワーはルノーの745馬力に対して、メルセデス760馬力、フェラーリ750馬力と両チームの方が優っていると推定されるが、ルノーは低中回転域での実戦パワーを感じさせ、また有効トルクもあって“ドライバビリティー”の点では完全に両チームより優っている。モナコのような公道コースでは、彼らのエンジンキャラクターの方がコースにフィットしているのは、実際にコースサイドで走りを観察しているとよく分かる。たとえば小さなコーナー出口からの加速力、マスネ高速コーナーでのアクセルワークなどドライバー・フレンドリーな特性が見て取れる。

さらにもうひとつ、好燃費性能もある。今年は無給油時代に戻り、モナコの260kmレースでは各チームとも平均値で1周あたり1.7kg、約135kgの燃料を積むことになる。その中でルノー・エンジンが、僕らの推察どおり約3%、ほかよりも燃費効率が上回っているとしたら……、当然、搭載燃料が軽くなり、ラップタイムに換算すると1周あたり約0.1秒以上の速さにつながっているはずだ。またレース・スタートが一段と重要になっている今季、ここまでの6戦を振り返っても、レッドブルとルノー(R・クビサ)が1コーナーまで抜かれたシーンはほとんど見たことがない。この発進加速性能でも好燃費ルノーは優っているし、チーム側さらにメリットを確実にすべく、“スタート・システム”の開発研究に精力を注いでいる。

マシン性能についてメディアではエアロパーツ、Fダクト、ストールウイングなどの改良を「アップデート」として取り上げることが多いが、実は開発凍結状態のエンジンでも内部の“合法的モディファイ”は認められており、アップデートは行われている。エンジン内部はカバーの中にあって、なかなか表から見る機会はないが2010年のF1エンジン<究極の燃費競争>で、いまルノーが他チームをリードしつつあることは間違いない。

2年ぶりに復活する第8戦カナダGPは、燃費が悪いコースとして有名だが、そこではレッドブルとルノー(クビサ)がどういうパフォーマンスを見せてくれるか、いまから大いに楽しみだ。

≪P.S. モナコGP夜話≫
土曜日の夜、仕事を終えてメインストレートを下見がてら走ったあと、ニース方向に向かっていたら路上検問にぶつかった。まだ食事もしていない9時半ごろ、我々が外国人だから止めるのかなと思ったら、なんと“飲酒運転”の検問だった。アルコール・チェックの器具を渡され、10秒間息を吐き出せという。ちょっと頭がくらくらするくらい目いっぱい吹いてやると、警官が「トレビアン!」と誉めてくれた。もちろんアルコール度は完全にゼロ。今度はこちらが「トレビアン!」だ。このあと、ホテルに戻ってから飲んだ地元プロバンス・ロゼワインが美味かったこと。
この検問のことを翌日、同じ方向のホテルに泊まっているBSのスタッフに報告。「もし日曜もやっていたら……」というと、おなじみの浜島氏が「大丈夫ですよ、今宮さん。僕らも宿に帰ってからでないとアルコールは飲みませんから(笑)」。
ヨーロッパで、しかもフランス(検問場所はフランス領)でも、最近は飲酒運転の取り締まりが厳しくなっている。僕は初めて体験だったが、皆さんの知り合いがこちらを車で走るといったら、ぜひ「飲酒運転にはご注意を」と教えてあげて下さい。

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