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2010年09月 アーカイブ

2010年09月11日

ハミルトンの“強運”とベッテルの“拙速”が際立ったベルギーGP

ベルギーGPのコメンタリーボックスの位置は、グリッド4列目の斜め上あたりにあり、6位のF・マッサが所定の3列目アウト側に向かうのが見えていた。スパは1周7,004㎞と長いため、普段よりも各車がグリッドに着くのが遅くなる。
「アレ!」--。マッサのフェラーリがグリッド枠をはみ出て止まった。目視でも半車身は前に出ているのが分かった。
これは明らかな“スタート違反”になる。レースディレクターがどう判断するか、スタートのやり直しになるだろうと、僕は一瞬思ったが、レースはそのままノーマルの手順で進行した。

レースディレクターはグリッドを見下ろす高さ数mのタワー上にいる。マッサのマシンが見えない位置ではなかったはずだ。またグリッド横にはスタート監視員のマーシャルもいる。昔はエンジンストールする者が多く、彼らが一斉に黄旗を振り、後続マシンに異常を知らせた。今回もまったくそれに等しい事態だったのだが……。

このマッサの“スタート位置違反”は結局、何ら問題にならず、スタートで4位に上がり、レースを4位でフィニッシュして終わった。この時点で、他チームが彼の違反に気が付かなかったせいもあるだろう。というのも彼の6位グリッドあたりはスパの場合、ピット側からはウオールに遮られてよく見えない位置関係になっている。スタート時にはチームメンバーも原則として危険なためにピットガレージ内に引きこもらねばならない。意外な“落とし穴”、いや“死角”になったマッサのスタート違反、後になってからこの件をFIAが調査に乗り出したが何ともお粗末な失態であった。
 
今年のL・ハミルトンは強運だ。雨がらみになったスパでは、ライバルが次々にトラブルや事故にまみれて引き下がり、自分もあわや危機一髪のコースオフをしながらも3勝目。武運長久だ。

ハミルトン182点、M・ウェバー179点、スパで1-2位の二人がチャンピオンシップをリード。S・ベッテル151点、J・バトン147点、F・アロンソ141点、3人とも追加点できずに終わった。R・バリチェロに1周目、最終シケインでヒットされたアロンソは完全なもらい事故、あの場でリタイアしても不思議ではなかった。衝撃は大きく、のちに彼は単独スピンして終えたのだがダメージが進行していた可能性がある。

バトンに仕掛けていき側面をヒットしたベッテル、あれは彼のラインミスで左に振った瞬間にバンプで跳ねてコントロールを失った。ベッテルだってぶつけたかったわけではない。あの状況では優勢ながらもセクター1の速いバトンを捕まえられず、山下りセクター2では抜こうにも幅が狭く、あの地点で仕掛けるほかなかったのだ。
しかしブロックする相手の動向を読み、完全なパッシング・チャンスを“待つ”時間を若いベッテルは我慢できなかった。拙速という言葉があるが、勝負を急ぎすぎたプレーは過去にもいくつかあった。最速に値する才能の持ち主は「仕掛けるのも早い」という個性を持つ。今後、終盤戦にもこれに似たバトルシーンは予想され、そのとき彼がどう動くか、王者になるための試練である。

第14戦イタリアGPモンザ、2010年6戦勝負シリーズが9月から“開幕”だ。
1位ハミルトンと2位ウェバーは実質同点のイコール条件、3位ベッテルは“31点差”となって毎戦6点を挽回しないといけない。5位アロンソは“41点差”、毎戦7点の挽回レースは計算上相当厳しい。だがそれをよく知ったうえで2冠経験者アロンソは「まだ諦めない」と言い切る。ティフォシに向けた単なるリップサービスではなく、今彼が追う相手は皆若い(ハミルトン&ベッテル)か、タイトル未経験(ウェバー)で、ディフェンディング・チャンピオン(バトン)は自分よりスピードに欠ける、と読んでいるからに他ならない――。

緊急提言<2輪界の賢者たちは、今こそ改革の勇気と知恵を絞り出せ!>

F1の合間、ヨーロッパ滞在中に2輪モトGPがあれば必ずTV生中継を観戦している。ベルギーGPの翌週、パリにいて「サンマリノGP(ミザーノ)」のモトGP決勝レースを見ていたら、サポートイベントのモト2で重大事故が起きたことが報じられた。現地14時20分には、コメンタリースタッフが「トミザワが亡くなった」と伝えた。

ユーロスポーツがそのままモトGPレース実況生中継を流し、レース後になってからしかるべき対応をしたのは、自分も現場でA・セナ事故に接したことがあるだけに、慎み深い態度だったと思う。表彰台には半旗が掲げられ、むろんシャンパンファイトはなく、それで表彰式は済まされた。レース後のダイジェストで彼の事故シーンが流されなかったのも正しい判断であり、ディレクター諸氏は混乱したはずだが、亡き富沢氏への配慮が感じられた。

自分は彼とは面識もなく、また2輪モトGPを専門取材している立場にもないが、近年このスポーツでは重大なアクシデントが多発していてF1アクシデント以上に気になり、見るたびにその潜在リスクを感じていた。なぜもっと関係諸機関が“事故防止”のための対策を検討しないのか、むき出しのまま340km/hというF1と同じかそれ以上の速度でバルセロナのコースを疾走するシーンを見るたびに、小心な自分は「怖さ」を感じずにはいられなかった。

2輪関係者は昔ながらのあのスタイルに慣れっこになっているのかもしれない。でも自分には信じられない。ヘルメット素材の強化はもちろん形状の大型化、レーシングスーツの“カプセル化”など、それがロボットデザインになったとしても、生身の体を防御する方法をもっと考えるべきではないか。
 ――富沢祥也氏が他界されたシーンを見ると残念無念でならない。2輪界の賢者たちは、この世界一デインジャラスなスポーツを今こそ「改革する」勇気と知恵を絞り出すべきではないのか。自分は2輪のアウトサイダーでも、どうしてもその一言を言いたくてこの文章を書いた。

モータースポーツに関わるひとりとして、心よりご家族やご親族、バイク・フレンズの方々に深い哀悼の意を捧げたい――。  

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